逆行のアーキタイプシリーズ。今回は逆行する天体の中では逆行期間の少ない(凡そ1年7ヶ月に1回程度)、金星についてです。
金星の逆行を出生図に持つ人の割合は高くはありませんが、2ハウスや8ハウスの冥王星、または強調を持つ人にも少なからず当てはまることがあるかもしれません。
逆行の動きが存在する天体のなかで、金星は逆行している期間が珍しい天体ともいえるが、金星逆行のアーキタイプは、自分自身の価値観と人との関わり方を完全かつ独自に築き、自分自身との関係を調和の取れたものにする、というところにあるだろう。
その結果として、金星逆行を出生図に持つ人は、自分の中心に軸が取れた状態の視点で他者と関わることができるのである。これは、金星の牡牛座的側面のレッスン、つまり自己信頼のレッスンにプレミアムがついたような状態ともいえるのだ。
スピリチュアルな観点からいえば、金星逆行を出生図に持つ人々は、『究極の関係性とは、人間の形をとらないものとの間に存在する』ということを学んでいるといってもいいだろう。
それはつまり、自分の中に存在する内なる神との関係性である。例えば、修道院で生活しているような人、また、アーティスト、音楽家にも金星逆行は多く見られる。彼らが創り上げるものには、自分自身と魂との間の内なる関係性が反映されているのである。
金星が社会での共通認識的な、つまりコンセンサスの取れた価値体系を示すならば、金星逆行を持つ人々は、自分が他者と類似していない、という感覚を通じて、強い社会的疎外感を持っている場合が多いだろう。
何が彼らにとって重要で、何によって自分と他人を関連付けるか、またそれがなぜか、といった点において、価値観の矛盾が発生し、彼らは周囲の社会環境で自分が特異であるという感覚、つまり仲間外れのような感覚を持つのである。
<生徒>私は金星逆行ではありませんが、そういった性質にとても共感します。
<ジェフ>あなたの魂の進化段階がコンセンサス段階よりも進化した状態にあり、社会的ハウスや人間関係のハウスに天体を持っている場合は、こういった性質が誘発される可能性が大いにあるだろう。
人はコンセンサス段階を飛び出した時点で、天王星のアーキタイプに触れ始め、天王星のアーキタイプに意識的であればこういった性質が出てくることは珍しくないのである。
一般的に金星逆行を持つ人々は、人付き合いをするときには、徹底した個人主義者、または、自分がカウンセラーやヘルパーのような役割になるような人物を相手に引き寄せるだろう。これは金星の示すところの魅力、磁力といった現象と関連している。
しかしもし、あなたの周りに金星逆行の人がいれば、その人物が自分の内面と向き合う作業を必要量こなしてきたかそうでないかによって、全く異なった質の磁力を感じるだろう。
<生徒>まるで、人間という姿を通して神聖さをもたらす、「グル」のようですね。人間という姿を通して、神を見ることができるからこそ、彼らの人間関係とは、自分たちを表現するものではなく、自分たちを通じて神を表現する、というように。
<ジェフ>そういう可能性もあるだろう。しかし、それもその人の進化段階によってだ。多くの人は、金星逆行を持つ人が、自分たちに定義できない何かを自分たちに与えてくれると感じ、アドバイスを求めて引き寄せられるのである。そういったことはとても一般的に起きるのだ。
この金星逆行の原理は、天王星の方向に向かっているといってよい。実のところ金星逆行だけではなく、全ての逆行のアーキタイプは天王星に向かっているのであるが。これは、天王星の個性化のアーキタイプ、つまり、社会に無条件で存在している、条件付けパターンから身を引くことを表しているのである。金星逆行は、金星の天秤座的側面ではなく、牡牛座的側面を強調しているのだ。
この金星の牡牛座的側面というのは、「自分自身との内面的な関係性」ということに尽きるだろう。これはまた、自立的になる学び、また、自活するために必要な自分の内面的資源を認める学びでもある。
詰まるところ、この牡牛座のアーキタイプは、自分の人生の意味がどういったものによって成り立っているのか、また何に価値を置くか、ということでもあるのである。よって、金星逆行の魂は、このアーキタイプを強調した形で持っていることになるのだ。
<生徒> では、2ハウスのカスプに水瓶座を持っている場合も、この金星逆行のような性質を持つことになりますか?
<ジェフ>それは、その人の魂の進化段階と、天王星の状態にもよるだろう。もし天王星が強調されているような出生図を持っていて、その人が個性化段階かそれよりも進化した魂を持っているならば、そういえるだろう。しかし、水瓶座のアーキタイプを持つ人々の中には、自分と似たような人のグループ、つまり標準的な基準の中で結束しているだけの人たちもまた多いのである。
魂の視点から見ると、幸いなことに金星逆行というのは、逆行の中では一番期間が短いものである。しかし、個人的な視点から見るとそれはとても長い冬のようであるかもしれない。金星逆行を持つ人々は、とても良い人間関係に恵まれたとしても、孤独感を感じてしまいやすいのである。
もちろん、彼らは独りでいることをある程度は楽しむだろうが、人間は本来、社会的動物である。よって、たとえ親密な人間関係があっていたとしても、彼らの内側に常に存在し続ける「全てのものからの孤独感」は、時として自他共受け入れることを困難に感じるかもしれない。
一方で、誰かがこの感覚を分かってくれるだろうと考え、その孤独感を埋め合わせようと、様々なパートナーシップを経験する金星逆行の人も多いだろう。彼らの最初のパートナーが人生のパートナーであることは極めて稀である。それは、過去世で未完成だったり未消化だった人間関係をやり直したり、生き直さなければいけない進化やカルマの必要性があることが多いからである。
同じ理由で、トランジットの金星が逆行に転じたときは、過去の人間関係が突然再浮上し、そこに引き寄せられるという現象が多くの人に起きるのである。
プログレスにおいて金星の逆行が起きたときは、ある特定の人生の問題を思い出させるような期間になるかもしれない。そしてそれは、魂が過去の生き方から次第に身を引くときでもあるのである。そうして、自分の奥深いところに引きこもることで、魂は本当の核となる「人生の意味」というものを再構築したいと望み、試みるのである。 その過程で魂は本当の人生の意味を問い、新しい意味を創り出すのである。
物事の価値とその性質、価値体系というものは変えることができるものであり、その結果、魂が他者とどのように関わるか、また他者がその魂とどう関わるか、ということもまた変えることができるものなのである。
出生時、プログレス、トランジットでの金星逆行のテーマは、その魂の、自分自身との内なる関係性、そこに尽きるのである。 それは、自分自身とどのような関係を持つか、自分の人生の意味は一体何なのか、そして、それは究極的に自分の魂の意味を見出す、ということでもあるのだ。
<School of Evolutionary Astrology 『逆行天体の進化的意味について』より金星部分を抜粋翻訳>
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