逆行する天体の進化における意味
土星の逆行
ここでは、進化的にもカルマ的にも、個人的の権威の感覚、物質的現実、自分の文化に溶け込む方法(土星)といったことについて、自分の感覚を育てていく必要があるタイプについて話そう。土星は、その社会のコンセンサス(注:皆の意見が一致していること)の規範、慣習、タブー、社会的規制、そして法律と相互に関係している。そしてこの土星とコンセンサスの関係は、コンセンサス自体が安心感を維持できるように、皆の意見に従うよう個人に圧力をかける。
土星逆行の人はこう言うだろう。「いいえ、そうはしません」「ありがとう。でも私は自分のやり方でやります」と。言い換えれば、土星逆行の人々は、彼ら自身の法律、規制、慣習、タブーを定義し、その上でどうやって個人が生まれ落ちた社会に溶け込んでいくかということを考えなければならない(土星)のだ。溶け込んでいく先の社会とは、それぞれのその人らしさを尊重する社会だ。彼らの状況的・内面的な現実の基盤は、土星が入っているハウスや星座が柔軟宮なのか不動宮なのか活動宮なのか、またどのようなアスペクトを形成しているのかによって絶え間なく繰り返し変わっていく。
土星逆行の人々が個性を歓迎し応援するような両親の元に生まれた場合、親子の間に何ら問題はないだろう。それどころか、たとえ自分にとっての現実が両親にとっての現実と正反対であっても、彼らはそんな両親に対して健全な敬意を抱くだろう。
逆に、両親のどちらか、または両方が権威主義的なタイプなら、問題が発生する。この状況は権威の衝突を起こすだろう。もちろん、我々はなぜそのような家族の元に生まれてくることがあるのか、進化やカルマの観点からその理由を見極めることが不可欠だ。そして同時に、我々が親になったら、自分が土星逆行の子供を持つことになったカルマ的・進化的な理由を理解することも重要だ。
土星逆行の人々は非常に内省的なタイプの魂を持っている。とても思慮深いのだ。この思慮深さの本質とは、自分にとっての現実の性質をどんなときでも深く観察・吟味・考察するということだ。このように深く観察する意図や目的は、成長するには自分の現実をどう変える必要があるのか、また人生に問題や困難をもたらしている既存の力学は何であるのかを、捉え直して定義付けること(土星)だ。それにより、人生で成長の妨げている何かを変える必要性や、成長や変化を可能にする新しい影響や衝動に気付けるようになるのだ。そうやって土星逆行は、既にある現実を変えるために必要なものを気付かせる。それにより成長や変化を起こすことができるからだ。
土星逆行の魂は、自然と深く考え込んだり塞ぎ込んだりする。しかし深く考え込むことと鬱病は大きく異なる。こういったことが起こるのは、土星逆行の人が世間一般に「現実」と呼ばれているものを簡単には信じることができないからだ。 こういった人々は、自分だけの現実の構造を自分で定義付けて捉え直す必要がある。その結果、自分の人生において本当の意味を構成しているものは何なのか、何が本当に重要で何が重要ではないかという点において、コンセンサスに疑問を持つ傾向がある。これにより、多くの人々が暮らすコンセンサス社会、皆の同意を得ている社会の様子と彼らとの間に溝ができてしまう。しかし、考え込んだり引きこもったりすることは、彼らにとって必要なことだ。なぜなら、それは彼らが自分自身のために何ができるかという内面的な気付きに導くことができるからだ。そしてその気付きは意図や目的の感覚を生み出す。意図や目的の感覚は、個人として自分が何をすることが重要かを自覚することでもある。
したがって、もし土星逆行の人と一緒に暮らしているパートナーが、こういった引き籠もるような行為を「関係を脅すもの」と解釈してしまったら、そのパートナーは土星逆行の人についてありとあらゆる判断と結論を下すことになるだろう。そしてもちろん、その判断は間違っている。なぜなら、こういった判断は皆、(土星逆行の人のことを理解して判断しているわけではなく)このパートナーが自分自身の現実を土星逆行の人に投影したことに基づいているからだ。このように決めつけたり投影したりするような判断は、土星逆行の人をさらに自分の中に追い込んでしまい、自己反省を深めさせ、より一層引き籠もらせてしまうだろう。こういった関係のパターンがある程度長く続くと、土星逆行の人は自分がその関係の中にいるという実感を持てずに、ただ単にその関係を維持し耐えながらやり過ごすことだけを続けているように感じてしまうのだ。
要するに、土星逆行は、世間一般が現実と呼んでいるものを受け入れられないということだ。彼らは、自分独自の現実の構造を定義付けること、自分の感性に従って現実を捉え直すことを必要とする。ある進化段階では、たとえ仕事、人間関係、友人といった領域において、意味のある機能的な生活を送っていたとしても、彼ら自身は何かに適合し所属していると感じられず、自分の居場所をどこにも見つけられないような心理を生み出すだろう。居場所がない感覚だ。それにより、あらゆる関わりを持たない人生をただやり過ごしているような内なる感覚が生み出される。そして、社会的な孤独感が心につきまとい始める。それは終わりのない憂鬱な気分と内省の繰り返しに拍車をかける。人生そのものを嘆く、「喪に服す」ような奇妙な感覚が生まれるのだ。
私はアントン・チェーホフの戯曲 『かもめ』を読んだことを思い出している。(原題は『Чайка』)(注釈1)この本には、いつも黒い服を着ている女性が出てくる。ある日、登場人物の一人がこの女性に近づき、なぜいつも黒い服を着ているのかと尋ねた。彼女の答えは、完璧な土星逆行の応答だった。「私は私の人生を悼んでいます」だった。
生徒:(土星逆行の人々は)内面的にも外面的にも疎外感があるように思えます。社会的に認められていることをしていても、彼らはそこに属している・適合している・ぴったりはまっているとは感じていません。何の意味も見出せないのです。あるいは、彼ら自身は人生に意味があると思えることをしているのに、他の人々が彼らのことを完全にどうかしていると思っていたりします。
生徒:私にもその経験がありますが、少し異なっています。伝統的な社会で行われているゲームに参加し、集団に巻き込まれてそれに従うことをうまくやりながらも、同時に、本当の意味ではそのグループに受け入れてもらえていないという感覚があるのです。実際に何かしでかしたわけでもないのに。自分はどこにも属せていない、居場所がないように感じる一方で、周りが自分を受け入れてくれていないという感覚も持ち合わせています。
ジェフ:これは、魂が持つ本能的な波動に基づいている。あなたの魂は、あなた自身に再定義をさせようと意図していることを覚えておいてほしい。つまり、自分自身を個性化するために、「皆の意見が一致していることから私は離れる必要がある」というふうに物事を捉え直そうとしているのだ。そうすることで、自分独自の波動が魂から発せられるようになる。はっきりと自覚するのは難しいだろうが、その波動は魂の意図を引き出すような効果を発揮するのだ。だが、土星逆行の人はそれに気付くことがなかなかできない。そのせいで、彼らは陰で仲間外れにされたり、いわれなき非難を受けたりしているような気持ちになるのだ。土星逆行の人によくあることだ。
生徒:実際に何が起こっているのかを理解するまでは、まさにその通りですね。しかし一方で、自分を反映したキャリアや人生、社会的なしくみを作ることによって、自分の現実を捉え直し再定義することもできます。そのことに気付き、実行することができたら、そのときこそ自分にふさわしい人々を引き寄せるようになり、自分自身が完全に受け入れられていると感じることができるでしょう。
生徒:本当ですね。全ての仕組みを変えることはそう簡単ではないので、何か違ったものを見つけようとするのでしょう。
生徒:土星は他の惑星に比べて仕組みが最も結晶化され、構造化されているので、土星の現実を変えることは最も難しいです。よくあるケースとしては、スピリチュアル的に破綻した状態で社会とうまくやっていこうとするか、もしくは、あまりに構造化され過ぎているので、天王星と火星の機能を使ってそこから本気で抜け出そうとするかですね。
ジェフ:繰り返すが、それは魂の状態によって変わってくる。もし魂がコンセンサス段階にあって土星が逆行していたら、問題が起きるだろう。(注釈2)そして、一見すると正常であるかのように装うという典型的な方法で埋め合わせをするだろう。
もし、魂がきっちりと個性化の段階にあったなら、世の中の体系を鼻で笑うことも実際できるだろう。土星逆行が問題になるかならないかは、進化の段階によって変わってくるのだ。
また、土星と関係するものには家系もある。家系の観点から考えると、土星逆行の子供たちは、親よりも進化が進んでいることがよく見受けられる。
生徒:もし誰かがコンセンサスの状態にあって、(自分の個性を抑え込んで、その代わりに自分の個性とは違うことで)埋め合わせをしていたら、長く患う病気になったりしませんか?
ジェフ:そうだね。進化の意図を抑圧することでそうなるね。初期の症状は骨格の構造的な問題として現れるだろう。
一般的な症状の一つは関節炎だ。それは、胸腺を通じてB細胞やT細胞に誤った指示が与えられ、免疫系の問題に発展する可能性がある。そしてより深刻になるだろう。いったんこれが発生すると、例えば白血病になったり、赤血球や白血球の数の変化につながったりすることもあるだろう。
生徒:それは土星と天王星のコンジャンクションの人もそうだったりしますか?
ジェフ:その組み合わせは症状を強めるだろうね。逆行する土星は、言わば天王星に向かうようなもので、扉が天王星の方向に開いているのだ。意識の観点からすると、土星は我々が意識できる範囲と関係している。(意識できる既知の範囲から飛び出そうとすることは)無意識への入り口のようなものだ。無意識に隣接する領域とは、個性化した無意識であり、つまり天王星だ。土星はそこに向かっている。
もちろん、天王星は個性化された無意識と関連している。そして三つの特定の形式の情報を含んでいる。その情報とは、土星の機能によって抑圧され、取り組みたくないもの、取り組むことを拒んでいるものだ。これらは徹底的に細部にわたって過去世の記憶と関連しているものである。水星が短期的な記憶と関係するのに対し、天王星が長期的な記憶と関連しているのはこのためだ。そして天王星の情報は、より広くより自由な我々の未来に関する抽象的な情報とも関連している。土星と天王星が、本質的に相反する関係にあるのはこのためなのだ。
要するに、天王星は、土星の現実という具体的な構造を絶えず変革し続けようとしているということだ。個性的であること、そして条件付けがされていない、つまり飼い慣らされていない魂に、天王星自体が重きを置いている。魂は、魂自身のユニークな唯一無二の性質によってのみ定義付けられるのだ。この性質は、仏教の言葉では「金剛心」と呼ばれている。(注釈3)
さて、天王星に向かっている土星というのは、つまりどういうことだろう?土星の逆行によって定義付けられた意識の間にある(意識と無意識の間、土星と天王星の間の)敷居や障壁は、それほど強いものではない。これは、土星逆行を持つ魂の顕在意識に、無意識の内容が絶えず繰り返し入り込んでいることを意味する。
生徒:もし家庭内に抑圧が存在し、それが感情的なトラブルを引き起こしていたら、土星はそれに関わりたくないでしょう。私の土星は逆行していて、しばらくの間、私の両親と再び同居しなければなりませんでした。両親とうまくやっていくためには(両親にとっての常識に従う必要があり)私が勉強してきたことや知っていること全てを諦めなければならず、何ヶ月も監禁状態でした。私の土星は12ハウスにあります。そのため本当に刑務所のように感じていたことにも納得です。もし似たような経験をされた人がいましたら、是非、ご意見をお聞かせください。私の神経や感情は壊滅的な状態に近かったです。でもギリギリセーフでどうにか助かりました。そのため今は自由を満喫しています!自分の好きなように考えることができて、何の問題も抑圧も感じていません。
生徒:ジェフ先生、同じ両親の元に繰り返し生まれること、この同じ人たちと追体験をするということについて、何かお話をいただけますか?
ジェフ:そうだね。土星の逆行は通常、両方もしくは片方の親との、過去世の繰り返しや追体験をする必要性と関連している。(現世で親子関係となった相手との間に、)未完了・未解決の何かを抱えているということだ。そしてもちろんこのことが、過去世で解決されなかったものを解決するための意図となる。
生徒:個性化された無意識のうち、集合的無意識に含まれないものなんて、あったりしますか?(注釈4)
ジェフ:あるだろう。全ては明らかに相互に関連しているが、個性化された無意識は、あなたという個性独自の中身であり、集合的無意識は、(例えば「人類」というときのような)“種”全体にとって特有となる中身、つまり海王星なのだ。
●注釈1:アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ(ロシア語: Анто́н Па́влович Че́хов、1960年1月29日 -1904年7月15日)は、ロシアを代表する劇作家、多くの優れた短編を残した小説家。(Wikipediaより)
●注釈2:ジェフは著書『魂の設計図』(原題は『Structure of the Soul』)や『冥王星:魂の進化成長の旅路』段階(原題は『Pluto: The Evolutionary Journey of the Soul, Volume 1』)の中で、魂の進化には未進化段階、コンセンサス段階、個性化段階、スピリチュアル段階という段階があることを述べている。
●注釈3:金剛は仏教の言葉で「最も硬い金属」を意味する。そこから「最も優れている」の意味で様々な分野の言葉として用いられる。金剛石はダイヤモンドのこと。金剛心はダイヤモンドのように硬い不動の心。意地を張って頑なになっている頑固さとは違い、他者の言葉や社会のありようでは揺るがぬものがあることを自らの内に見出した状態。ジェフはこれを見出すことを、「土星から天王星へ向かう」と表現している。
●注釈4:太陽系における土星、天王星、海王星の公転軌道を思い浮かべると、生徒が何を質問しているのか捉えやすい。海王星の軌道の内側に天王星の軌道があり、その内側に土星の軌道がある。したがって、集合的無意識(海王星)にほぼ内包される形で個性化された無意識(「なかなか気付くことができずにいた“金剛心”の自分」、天王星)があり、さらにその内側に内包される形で社会的な規範や意識できる範囲(土星)がある、と捉えることができる。その上で、ジェフは「集合的無意識(海王星)からはみ出すような個性化された無意識(天王星)も、中にはある」という旨を述べている。
訳:ベッソンちづる(Chizuru Besson)
校正:相原あすか、相良有里
監訳:佐々木りさ
原文:The Evolutionary Meaning Of Retrograde Planets | School of Evolutionary Astrology – Jeffrey Wolf Green
<School of Evolutionary Astrology 『逆行天体の進化における意味』より土星部分を抜粋翻訳>
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