逆行する天体の進化における意味
天王星の逆行
さて、先ほど話したように、土星の逆行は天王星に向かうことになる。天王星は自由を強調し、状況的にも内面的にも、自分の個性が反映されたユニークな現実の仕組みを見出すということを意味している。土星が天王星に向かっているということは、反抗のアーキタイプに向かうということだ。何に対する反抗だろう?ああしろ、こうしろと指図してくる全ての人に対しての反抗だ。天王星は、様々な現実の構造・仕組みを経験する必要性に重きを置いており、その実験を通じて、最も自分を反映しているものを見極めるのだ。あるいはそこまでではなかったとしても、心の中で様々な可能性についてよく考え、それを噛みしめ、必要であればより一層深く考え込む。
天王星が逆行すると、今度は海王星に向かうだろう?だから、天王星逆行は、個人化や個性化の強調という点で天王星のアーキタイプを勢い付かせている。個人化・個性化は天王星のアーキタイプと関連している。ヨーロッパでは、コンセンサスの意識から解放されるまでは個人ではない、という密教思想が広まっている。それまでは単に「人」と呼ばれる。
生徒:ある文化においては、成人するまでは父親の名前を名乗り、成人してからは自分の名前を名乗りますよね。
ジェフ:それが、一般的に名字が社会的な機能と結び付いている理由だ。そしてこれが、実際のところのファミリーネームの起源である。名字は人類の歴史の大半における社会的な役割の一つとして、家族の一員から次の世代へと受け継がれてきたことを覚えておいてほしい。それは継承されてきたもの、つまり土星である。こういったことから、家族の姓の起源は、社会的な機能や役割の中に見出されるのだ。
生徒:出生時に土星が逆行していた場合を除きますね。
ジェフ:天王星は全ての人間に備わっている「自分は隣の人と同じではない」と感じさせるパーツだから、(土星の)逆行は天王星のこちらの側面を強調することになる。地球上の全ての人間が、隣の人と自分は少し違っているという感覚を持っている。その最も明確な表れ方は、セルフイメージと重なる身体的な見た目、外見だ。だが、人と違っているという感覚が強調されることもあるだろう。どのように、またどれだけ人と違っていると感じるだろうか?
全てのチャートで共通している指標は、水瓶座がどこかにあること、天王星がどこかにあること、そして11ハウスのカスプが位置するサインがあることだ。これは誰のチャートにあるものだ。
そのため、「人と同じではない」と違いや多様性を感じるアーキタイプを持ち合わせているという意味で、人類全員がつながっていると言える。だが、その強調の度合いはどのくらいなのかというと、水瓶座に幾つの天体が入っているのか、11ハウスにはどのくらいあるのか、天王星のアスペクトは幾つあるのか。こういったことによって強調の度合いが決まる。
そして、(本来の自分を生きることとは違う形での)埋め合わせが起こるとすれば、天王星逆行の人は皆と違っているという感覚から社会的な不安を感じるかもしれない。その不安から、社会的に受け入れられ個人的な安心感を得るために、仲間集団の一部と同調し、絆を深めようとすることがある。その結果、天王星逆行の人は、自分という一人の集団にならざるを得ない傾向がある。
アーキタイプ的な対応として、天王星逆行の人は集団行動をしなくなる。万が一、集団行動をしたとしても、それは教義や信条ではなく個性を尊重するような、異端児や独立独行の人の集団になるだろう。天王星は、社会全体という環境において、どうやって集団が形成されるのかということに関連している。保守的な集団、革新的な集団、あるいは現状維持の人々の集団がいてもいい。こういった集団の中で、自分と同じような考え・意志・精神を持つ人と友達になる。天王星だ。当然、我々は自分の中だけでなく、生まれた社会全体の中でも安心感を得られるよう、同じような考えの人たちと結び付き、天涯孤独だと感じないようにする傾向がある。
出生時に天王星が逆行していると、過去世において解決や完了をしていない友人関係を繰り返し、追体験しようとする魂の意図と関連してくる。その意図には、そういった魂が幾つもの過去世で旅路を共にしてきたある魂と、逆行、つまり再会することを望んでいるという事実が含まれている。自分と相手の関係を継続しようとしているということだ。
天王星の逆行は、自分自身の意欲・意志の力という意識の中に発生するあらゆる種類の精神的な思考形態、つまりより広く自由な未来を示唆し象徴する思考形態を、創造し際立たせる。なぜなら、天王星が、進化の未来と必要性についての魂の内なる設計図(ブループリント)と関連しているからだ。
したがって、未来を象徴するこの種の思考は、個々の無意識から土星の扉を通って浸透してくる。——土星の扉において土星は、私たちがどんな時も意識的に認識しているものとの構造的な境界線に関係している。この土星の扉とは、ある人生における主観的な意識と、個性化された無意識との間にある自然な境界線であり、長期記憶によって記憶された全ての過去世の記憶と相互に関連している。そしてそこには、進化の未来に関する魂の内部からの設計図(ブループリント)が含まれている。
通常、7割の人にはこの考え方は機能していない。彼らにとってこういった思考はただの「心の中で検討すること」であり、これが彼らにフラストレーションをもたらすことになるだろう。なぜなら、様々な可能性を垣間見ることができるのだが、孤独と結び付いた恐怖と不安によって行動を起こさないからだ。
天王星逆行に含まれるメッセージとは、そのようなメッセージに基づいて行動することだ。だが、鍵となる重要なことは、いつまでもなくならずに繰り返されていることだけに取り組むということだ。一度や二度だけ現れて終わるようなことは、天王星に関わる事柄として典型的な先走り・時間の先取りだ。何度も繰り返し浮かんでくる思考こそが、行動を起こす必要があるものだ。この思考が行動に移されると、それは後の5年から7年に渡る魂の営みを象徴するものになるだろう。行動を起こさないと、未来や可能性を垣間見る思考は、ただの問題となってしまうだろう。つまり、天王星逆行は、自分自身のユニークな無意識の内容(未来や様々な可能性)を、認識できる意識の中に絶えず繰り返し放出し続けることになるのだ。
この内容には三つの側面が含まれている。一つは、今我々が話していることだ。魂の中の進化の意図を反映した、より広く自由な魂の未来と結び付いた思考だ。これには、土星のアーキタイプによって抑圧された内容も含まれている。
我々はあらゆる種類のことを抑圧する。自分自身を不安にさせる全てのもの、どんな理由であれ自分自身の居心地を悪くさせるもの、逃げ出したくなるような誰にも知られたくない自分の歴史の一部分、あるいは、精神的な安心感を生み出すために抑圧されているトラウマ性の記憶——安心のための抑圧とは、トラウマそのものである傷やトラウマの内容があまりに深刻過ぎる場合、何らかの方法で対処され癒されない限り、不安定な状態につながってしまう。それで、安定のための抑圧が起こるのだ。
また天王星には、今世と過去世の全ての記憶の内容、つまり長期記憶も含まれている。このことは意識的に忘れられた今世の記憶とも関連している。例えば、10年前のある日に何をしたかについて詳細に覚えている人はどれほどいるだろう?ほとんどの人が意識的に思い出すことはできないだろうが、そうやって思い出せなくても、その記憶は我々の内部に存在している。これも天王星の情報だ。
出生図での天王星の逆行は、個性化された無意識のあらゆる側面が、自覚できる意識に生涯を通じて繰り返し絶えず浮かび上がってくるような魂と関連している。
その魂の意図は、そういった内容を振り返り、つまり逆行することにある。そこから何度も何度も学ぶことで、天王星の情報を自分自身が今いるこの現実(土星)で応用するためだ。そうすることで、個人の進化のプロセスが加速していく。心してほしいのは、そのような記憶が自覚できる意識に現れるたびに過去から学ぶこと、そして、魂の未来への進化の面での発達を遅らせるような過去は繰り返さないことだ。
そういった考えが、土星を経由して、広く自由な未来に関連した魂の自覚の中に浮かび上がってくるので、天王星逆行の魂は自然と行動を起こしたくなるだろう。そうすることで、自分自身の魂の進化の面での発達を加速するのだ。
天王星、水瓶座、そして11ハウスに関係する最も難しい事柄は、トラウマだ。天王星が出生時に逆行していると、通常これは、魂の内部で未解決なあらゆる種類のトラウマを経験している、そんな魂と関係しているだろう。
魂がこれまで経験してきたトラウマが未解決のまま残っていると、程度の差はあれど、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の強まりにつながってくる。その結果、その魂の人生のあらゆる側面は、この未解決のトラウマの影響を受けることになる。こうなると、魂が自ら作り出すあらゆる状況においてPTSDが引き起こされ得る。これが起きると、PTSDの引き金となった実際の状況とは全く不釣り合いな、過度な反応をするようになる。PTSDによるコアな影響は、ほとんど全ての生活の現実や状況から切り離される、根本的な断絶だ。
出生時に天王星が逆行していると、その魂は、トラウマがあった過去世から今世に持ち越され、現在も続いているPTSDの影響を解決しようとする。この意図のために、魂はトラウマと関連付いた記憶の断片を、絶えず繰り返し自覚できる意識の中に放出し続け、今世でそのトラウマを「思い出す」という形で追体験する、つまり逆行ということだ。場合によっては、トラウマを癒して前進する目的で追体験をしようとするこの魂の意図が、元となっている過去のトラウマを今世において実際の出来事として再現する形で、魂の内部に現れてくることがある。
その場合、この魂の意図と、再現する理由は同じだ。それは、魂が進化において前進することができるよう、トラウマを癒すことである。これが行われずにいると、進化の観点から、魂が「停滞する時間」、つまり魂が前に進めないように凍結した状態が続くことになるだろう。もし、あなたがそのような魂の持ち主のカウンセリングをしている、あるいはあなた自身がそういう状態にいる場合、魂がそもそもなぜそのようなトラウマを作る必要があったのかを見極めること、それによってのみ、トラウマから本当の意味で癒される、ということを理解することが重要だ。このことはもちろん土星のレッスンと関連している。自分を犠牲者のように感じるのではなく、自分の行動に責任を持つことを学ぶということだ。進化占星術の素晴らしいところは、なぜ様々なトラウマを生み出す必要性があるのかという理由を含め、あらゆることの実際の理由や原因を気付かせてくれることだ。
天王星がトランジットやプログレスで逆行する時期は、個性化した無意識(天王星)の内部に留められた内容が、個人の意識(土星)の中に滲み出てくる時期と関連している。そして、その期間中は、進化的な成長をするためにも、そういった情報に基づいて行動することが必須となる。その差し迫った必要性から、個人は突然、自分が今いる現実から、あらゆる意味において切り離されたように感じ始めるだろう。
このように切り離すことは、自分の人生に起きている状況を客観視できるようになるために必要だ。また、魂をこれらの状況に縛りつける感情的な力学から引き離してくれるという意味でも、切り離しは不可欠である。魂に付着している感情的な縛りから切り離されることによって、現実のあらゆる方面から客観視が可能となる。そしてそこに気付きが発生する。真の意味で、人生で成長し進化するために必要となる変化をどうやって起こすのかを、切り離しは魂に教えてくれるのだ。
初めの話に戻ろう。出生時に天王星が逆行していると、海王星に向かう。この組み合わせは、地球そのもの、社会全般、また地球上の大多数の人々によって定義付けられている人生の意味という現実から離れるといった、核心的な疎外感を生み出す。それによって、魂の中に「人生の永続的な意味とは何か」という内なる疑問が浮かび上がるのだ。海王星は、人生とは何であり、何ではないのかという究極の意味とつながっていく。それが、霊的なものや創造の源、つまり神の探究とつながる理由だ。
出生時に逆行している天王星は、人生そのものから、さらには自分自身からも根本的に切り離されている魂と関連する。それはまるで、魂が常に自分自身を観察しているかのように、自分の内面もしくは人生、いや何に対しても、真の意味で深く関わっていないのだ。
これは実際のところ何をしようとしているのかと言うと、魂が自分自身と他の全ての事象を客観視できるように、感情的なつながりを持たずに眺めようとしている。この魂の目的とするところは、そういった客観視、つまり“セルフナレッジ”(自己認識・自己評価)であり、感情的な愛着や執着によって色付けや条件付けされていない、他の全てについての知識である。
このような進化の過程を経て、魂は、進化の促進のために何をするべきか、そして、どんな人生の状況でも、成長が起こるようにその状況そのものが変化するには何が必要か、はっきりと気付けるようになるのだ。
訳:ベッソンちづる(Chizuru Besson)
校正:相原あすか、相良有里
監訳:佐々木りさ
原文:The Evolutionary Meaning Of Retrograde Planets | School of Evolutionary Astrology – Jeffrey Wolf Green
<School of Evolutionary Astrology 『逆行天体の進化における意味』より天王星部分を抜粋翻訳>