進化占星術における水星の役割

このシリーズはSchool of Evolutionary Astrologyのサイト上など一般に公開されている英語記事を翻訳し、ご紹介するものです。引用・転載は、出典を明記の上、お願いいたします。

ジェフ:まずは水星について、それから進化占星術や我々の意識における水星の役割について話していこう。多少抽象的に聞こえる部分もあるかもしれない。

意識の性質について、具体的に出生図に当てはめて話していこう。水星をいろいろなサイン、ハウス、アスペクトに配置して、できるだけ具体的に考えていくつもりだ。

水星の役割について最初に理解すべきことは、水星は人間の意識において、現象的現実の性質に秩序と直線的構造を与えるニーズに関係するということだ。(注釈1

これが何を意味するかというと、我々が現実や創造と呼んでいるもの自体は、現象、つまり五感で認知できる物であるということだ。言い換えると、例えば私の隣にあるこの黒板は、自分で自分を「黒板」と呼ぶわけではない。(元から黒板と呼ばれていたわけでもない。)私がそう呼び、あなたがそう呼んで(「黒板」として認識されて)いるのだ。このことが意味するのは、存在の本質はそもそも現象的なものであり、ひとえに顕現・顕在化という創造であるということだ。(注釈2

つまり、人間の意識が感情的に安心するためには、現実に線形的な構造を作るべく、全ての現象的な形やイメージに名前を付ける必要がある。黒板というのは一つの名称であり、(その名称があることによって)別の名称である床、壁、部屋、建物、駐車場、今いる北西部のタックウィラの街、そしてもちろん、惑星や太陽系などともつながっている。(それぞれの名称とその関係性を通して論理的に理解できるようになる)

私が言いたいのは、これらのものが自ら積極的にこういった名称で呼ばれようとしているわけではないということだ。我々がそう呼んでいるのだ。

つまり、水星は存在の現象的(認知可能な固有の)性質を知的に秩序付ける役割を担っている。では、どのように呼び名を決めるのだろうか。

名前を付ける理由の一つに、「何をどう呼ぶか」という合意、共通の認識を通じて、お互いにコミュニケーションを取れるようにすることが挙げられる。もしほとんどの人が、この現象的な物体を「洗面台」ではなく「紙」と呼ぶことに合意すると、お互いにコミュニケーションを取るための基礎ができる。要するに、我々の意識の一部として感覚を持っているということだ。触覚や聴覚など、感覚と呼ばれる現象は、実は意識が作り出しているのだ。

これらの感覚は意識の延長線上にある。言い換えれば、我々が死体、つまり死んだ肉体に近づいてみると、死体はもはや感覚を失っている。死体に歩み寄り、どうにかしてパンをその口にくわえさせても、死体がパンを噛んだり味わったりするようにはできない。その肉体に感覚を与え、運動させるためには、意識がなければならない。つまり、我々が感覚と呼んでいるものは、意識を肉体の範囲まで拡張したものだということだ。そう、思考・知覚・認識のような、意識に呼び起こされた感覚という媒体によって動いたり味わったりするのだから、意識があることが必要なのだ。

思考は水星の機能だ。思考には二つのタイプがある。一つは線形的・直線的で合理的な思考、つまり演繹的思考と呼ばれるもので、特に左脳と水星に関係している。もう一つは直感的な思考(帰納的思考)だ。非合理的で非線形であり、それはもちろん右脳と木星に関連している。私が言いたいのは、感覚的な刺激の性質が、実際に思考を誘発したり喚起させたりするということだ。

要するに、感覚的な刺激によって喚起され、「これは私の横にある黒板だ」のような思考・アイディアが誘発されるということだ。感覚を通して形と機能を知覚することで、意識の中に思考が発生する。まさにこのメカニズムと力学こそが、最終的に全ての現象的な現実に秩序を与えるのだ。

重要なのは、どのような人生においても、我々は生きていく上で経験し続けるということ、つまり、内外の環境から情報やデータを収集し続けるということだ。この継続的な情報やデータの収集は、より多くの思考や認識を絶えず喚起させ、それが最終的に(個人の)思考全体の創造につながる。そして、(個人の)思考全体は最終的に他者の思考と結び付き、(より大きな)知性全体、一連の整合性をもった精神性全体を創造するに至る。そしてそれは、人生という経験の精神的な意味合いの理解をもたらすのだ。

当然のことながら、これらの思考は直線的・線形的で演繹的だ。左脳と通じる水星の最たる本質は、帰納的な論理ではなく、演繹的な論理と関係している。

演繹的論理とは、ある現象が次の現象へ、その現象がまた次の現象へと、次々に結び付いて全体を構築することをシンプルに意味している。例えるなら、ジグソーパズルを箱から取り出し、床に無造作に放り投げるようなことだ。バラバラのピースが自然につながってパズルができ上がるわけではないが、パズルのピースはそもそも、他のピースとつながって全体として完成する性質(凸凹や図柄)を内在している。しかし、放り出されたままではそこで雑然としているだけだ。(全体像にたどり着くには次々につなげていく必要がある。)

物事と物事を結び付け始めると(水星)、つまりピースとピースをつなぎ始めると、我々は最終的に全体像にたどり着くための演繹的な論理の進め方を開始することになる。最終的に全てのパーツがつながるのだ。これは水星の機能の簡単な例であり、演繹的論理のプロセスを通じて、我々は自分たちの現象的現実の経験を思考や知覚によって体系化できるような知的システムを作り出す。

これは、例えば人類史に興味のある人には非常に重要なことである。我々が言語と呼ぶものの根底には、内外からの刺激に基づく思考や知覚の本質があるのだ。問題は、人類は長い間地球上の至るところに存在しているのに、言語が(人類全員に共通のものに)統一されていないのはなぜかということだ。我々は皆、同じ人間であり、同じ種族なのだ。なぜ唯一の言語がないのか?なぜこの地球上には、このように信じられないほどの多様な言語体系(水星)があるのか。なぜか?誰かこんな疑問を抱いたことがあるだろうか。考えるのがつまらなさ過ぎるだろうか?

ごく簡単に言うと、言語の多様さは魂の進化状態を反映しており、結局のところその地域の地理的な位置関係やそこに住まう人々と、そこで起こっている進化に結び付いているということだ。言い換えれば、自分がオーストラリアのアウトバックに住む原住民の魂である場合、アウトバックという地域の状態に基づいて体系化された環境での現象的現実の経験は、西ヨーロッパのルネッサンス後期にいる場合の自分が経験するものとは根本的に異なるだろう。

知覚やその結果生じる思考の本質が異なり、結果として言語も異なるものになるだろう。

生徒:電球のような発明はどこから来るのでしょうか?電球が存在するようになる前は、(電球にまつわる)思考も経験もありませんでした。

ジェフ:そうだね。結論から言うとあなたは天王星的な質問をしている。ここでの基本的な問題――何かを発明するということは果たして可能なのだろうか。あるいはそうやってあたかも発明が具現化したような現実を創造して、発明が起きたという現実に同調しているだけなのではなかろうか――は、恐らく一部の人にとっては議論の余地のあることだ。

私が言いたいのは、思うに、神の創造と呼ばれるものは、(現実になった)あらゆることも、あるいは(まだ現実になっていない)可能性の状態のものも、全て同じ瞬間に現れたものだ。だが、時間と空間の関係を考慮すれば、紛れもなく進化の過程も経ているはずだ。ある惑星における種の進化の要件は、その時点で種の発展を促進させるために同調するものを決定付けている。したがって、私にとってこれは天王星の原理であり、占星術の本では「ハイヤーマインド」(高次の心)と呼ばれているものだ。

そのため、その当時の言語の性質を理解することは非常に重要なことだ。この中で、他の言語を勉強したことがある人は何人いるだろうか?他の言語を勉強したことがある人に聞いてみたいのだが、自分が勉強している言語の枠組みにどっぷりと浸ることで、現実の認識が変わるようなことがあると思わないか?これが私の言いたいことだ。水星はこの機能を与え、それは完全に、目下の進化の要件に基づいている。

したがって、言語は明らかに、知覚の基礎であり、また知的思考プロセスの基礎となるものを伝えるコミュニケーション(双子座、水星、乙女座)の媒体になる。

コミュニケーションの本質そのものが、継続的な学習経験だということだ。他者とコミュニケーションを取るとき、自分では考えもしなかったことを耳にすることが多いだろう。

だから、人は本質的な話をする。そして、こうやってさらに情報を収集する。これは興味深いプロセスだ。我々が外的な現象から刺激を受けるとき、それは知覚や思考という形で現れながら内的な刺激を喚起し、その逆もまた然りというように絶えず続くのだから。これが学習のプロセスの本質だ。もう一度言うが、刺激は、意識内の思考と知覚のまさに基礎となるものである。そして、意識は時間や空間や地理的な場所の要件・局在に従って進化する。(注釈3)水星の思考は、知覚や認識の仕方と結び付いており、これが進むにつれて、今度は我々の知的枠組みの基礎となる。合理的、演繹的、直線的思考。つまり、連続的思考だ。

これは、木星や右脳とは全く異なる。繰り返しになるが、右脳は非直線的であり、非演繹的(帰納的)であり、「非合理的」だ。

木星の機能は、知覚したり考えたりすることに、抽象的または概念的な基礎を提供することだ。もし私がオーストラリアの原住民で、そこで自分の現象的な(五感で経験することの)性質を扱っており、言語や知覚や思考プロセスを生み出しているとしたら、ある時点で「これは何を意味するのだろう?より大きなつながりは何だろう?」と知りたくなるだろう。

そう問いかけた瞬間、右脳が喚起される。つまり、水星の線形的で演繹的な思考に、右脳が概念や抽象的な原理を与えるのだ。これが、我々が信念と呼ぶものの基礎となる。要するに木星は、我々が種として、また個人として、物理的環境の即時的・直接的(に影響するつながり)だけではなく、遥かに多くのものとつながっていることを気付かせてくれる意識のアーキタイプだ。我々の目が空や恒星や惑星を感知できるようにね。

これは、意識に関するより大きな疑問を生じさせる。宇宙の一部が、信念や宗教、哲学、形而上学の基礎となっていて、自分はそれとどのようにつながっているのか。

我々全員がこうしている。古今東西の文明の性質を調べると、神話や宗教の一つひとつに、個人と種が、常に(秩序ある統一体としての)宇宙とつながってきたことを見出せるだろう。これが木星の機能だ。

さて、ここで大きな問題がある。誰が正しくて誰が間違っているのか?誰の認識や信念が正しいのか?誰の認識や信念が間違っているのか?彼らは全て正しいのか、それとも全て間違っているのか?ローマ・カトリック教会の信仰や思想は、チベット仏教徒の認識や思想や信念とは異なるが、何らかの形で妥当であり、正しいのだろうか?私の解釈は正しいのか?誰が間違っているのか?誰がそれを決めるのか?

ここで明らかに問題なのは、自分の進化の条件が何であれ、魂が継続的な成長を促進するためにそれぞれの人生で何を必要とするかによって、認識の性質を決定するということ。そして同様に、信念の性質をも決定するということだ。進化してコンセンサス段階にある場合、それはひとえに、魂のニーズによってコンセンサス段階になるように、認識やアイディア(意見)が決定されていることを意味する。(注釈4)その結果、自分自身は特定の文化の社会的通念や信念をただただその身に引き受け、その文化の信念を拡張する者になるだろう。この点を理解しているかな?

だが、もし一方で、一般的な社会通念に囚われず、自分自身の個性や考えを発揮しようとするならば、その人の認識や思考や信念は、個性化した思考と全く同じになるだろう。我々の個性の本質は宇宙とリンクしている。それを理解するための知的/哲学的な方法をどのようなものにするか、つまりそれを理解するにあたって自分がどのような思考や信念を体験するか、魂は決定しようとする。そのように個性の本質を理解しようとしているとき、我々の思考プロセスは主に、コンセンサス、つまり一般的な社会通念や信念、慣習への拒否と反抗に基づいているだろう。

スピリチュアル段階にある場合――ちなみにこれは宗教とは異なる。宗教はコンセンサスのためにあるからだ――スピリチュアル段階にある場合は、最終的に全ての認識、全ての信念、全ての進むべき道は、同じ創造の地点に通じていると気付くだろう。多様性における統一性や調和という、魚座の究極の象徴だ。

水星と双子座の性質を調べてみると、それらが12のハウスやサインのうちの柔軟宮クロスとつながることが見て取れる。3ハウス/双子座、6ハウス/乙女座、9ハウス/射手座、そして12ハウス/魚座だ。この柔軟宮クロスは、意識の中に自然な力学的緊張感のある状態を作り出す。

意識の領域で、これはなぜ、何を表し、象徴しているのだろうか?

ここには、演繹的論理と帰納的論理の間の自然な対立がある。唯一の特別な思想を掲げる派閥のような視点と、思想の派閥に基づかない普遍的な視点との間の自然な対立だ。帰納的論理と演繹的論理の緊張は、特にこの種の文化において大きく問題視される。

少なくともこの部屋にいるほとんどの人は、左脳の直線的な演繹的プロセスを重視する教育システムの中で育ってきた。学校に行くと、基本的に教えられたことを暗記するように求められるが、教えられたことの概念的な基礎を教わることはない。ほとんどの人は、初期の教育環境や、さらには親による環境において、こういったシステムにさらされてきた。そして、教育カリキュラムの中に、例えば瞑想(のような哲学的・帰納的な機会)を見付けることができなかった。

生徒 :それはなぜだと思いますか?一般論として述べるつもりはありませんが、アメリカやカナダは東洋よりも低い進化状態にあるとお考えですか?

ジェフ:これは決して、そのような判断、“ジャッジ”をするべき問題ではない。単に現象そのものを観察すればいいのだ。なぜなら、人類という種を考慮して存在の本質を分類・分析すると、最終的には(国や地域ではなく)一人ひとりに(本質があるということに)辿り着くからだ。では、魂はなぜ、ザイールやチベットやニューカレドニアではなくアメリカに生まれようと決めるのか?それはカルマ的にも進化的にも、個々の魂の要件を反映している。そのため、カナダやアメリカの進化状態について質問に具体的に答えるとすると、それはルネッサンス期のヨーロッパの発展、そして観察と相関関係に基づいた自然科学から演繹的で実験的な科学へという移行――言い換えると、カナダやアメリカの進化状態は、現象として認識されていることを実験的・経験的に証明するための努力に基づいているのだ。

したがって、東洋の人々がいわば内なる顕微鏡を使ってそれを証明するのに対し、西洋の人々は外的な顕微鏡を使って同じことを証明しようとしているのだ。私が言いたいのは、どちらが優れているとか劣っているとかいうことではなく、ただそうあるだけであり、もし哲学が偏狭的・独断的ではなく、宗派や教義に囚われず、本質的・普遍的なものであれば、実際にはお互いに補完し合うことができるということだ。つまり、演繹的論理と帰納的論理の間に力学的な緊張関係があるのだ。ここで重要なのは、帰納的論理というものの本質は、最初に全体を把握することで、各部分がそれ自身の自然な秩序で自ずと明らかにされるということだ。

一方、演繹的なアプローチは、やはり部分から全体を構築しようとする試みだ。このような文化では、これは大きな葛藤になる。なぜか?

それは、東洋でも西洋でも、どのような文化においても、人には右脳と左脳があることに変わりはないからだ。直感も、演繹的な知性も残っている。熟考もするし、大きな疑問も投げかける。演繹的な分析の産物ではない、自然発生的な気付きを今でも持っている。しかし、演繹的な文化によって、自分が知っていると思う全ては実験的・経験的に証明されるものだと思い込んでいるので、右脳と左脳の間に矛盾や葛藤が生じるのだ。

その結果、この種の文化の多くの人々は、実際に直感していること(木星、9ハウス)を疑う(乙女座、6ハウス)傾向があり、魚座や12ハウスの象徴を通じて、混乱する結果に至る。要するに、この種の問題と関連する魚座や12ハウスのアーキタイプは、魂の必要な成長を制限している様々な(演繹的な)思考や知覚、アイディア、見解を、絶えず繰り返し解消するということだ。知的混乱を経験したことがない人はここにどれだけいるかな?

これは、双子座、乙女座、射手座を経由してきた魚座の経験だ。たとえ自分が右脳タイプだとして、自分自身や他人に自分を説明できる壮大な哲学的構造を持っていたとしても、もしそれらの信念体系や哲学的な構造自体が、その時点バージョンの真実の全てに過ぎないならば、その非常に幸せな信念は、あるときにはもうそれほど幸せなものではなくなるだろう。うまくいかなくなるだろう。

この力学に結び付く魚座が意味するあらゆることは、最終的に、一部のバージョンや限定的な理解ではなく真実全体を受け入れることにある。全てであり、だからこそ多様である、そんな中での統一や調和だ。歩む道は違えど、全ての道は同じ地点へと通じている。

ここで信じて欲しいのだが、左脳はこれを証明することは一切できない。左脳や理論そのものの限界だ。そのため、そのような真実を理解するためには、ある時点で、意識における主要なガイドとして左脳から右脳へ意識を転換しなければならない。つまり、水星が木星をリードするのではなく、木星が水星をリードするようにするのだ。

さて、これを占星術に当てはめるなら、水星を様々なハウスやサイン、アスペクトに配置(して表現)することができる。そこから何が学べるだろう?蠍座、乙女座、または魚座に水星がある場合――最高の配置だ――またはどのサインにあったとしても、水星は、知覚、認識、思考プロセスがどうなっているかの全てを表していないだろうか?知性(左脳)自体が、自然に現象的な存在へと方向付けられていることを表していないだろうか?

我々が現象的な経験と存在の本質をどうやって知的にまとめ、そしてどのように伝えようとするかを表していないか?蠍座の水星は、牡牛座の水星とは機能が異なるだろうか?思考の本質、思考に至る方法、思考と思考の組み合わせ方、またそういった思考を伝える方法は違ってくるだろうか?

すると疑問が湧いてくる。魂はどういう理由で、水星のサイン、ハウス、アスペクトの配置を選ぶのだろうか?明白で究極の答えは、魂の進化発展のすぐ次のステップを容易にするということだ。このように考えてみると、どこかのサインの水星が他のサインの水星よりも良い・悪いと言えるだろうか。そもそもなぜそんな判断、良し悪しの“ジャッジ”をするのか?なぜ(その配置が存在するだけで)これは必要だと思えないのか?

例を挙げるなら、例えば1ハウス・蠍座に水星がある人なら、どのような種類の思考や認識を持っていると考えられるだろうか?彼らはどのように知的に現実をまとめようとしているだろうか?どのようにコミュニケーションを取ると予想する?誰かアイディアがある人はここにいるかな?

まず分かり切った質問をしよう。そういう人は表面的な会話に知的な興味を示すだろうか?彼らはどんな本でも無差別に読むだろうか?そうしないのはなぜだ?そうしないなら――皆「そうしない」と首を振っているが、どうしてだと思う?この特性が示すのは、「一般的かつ総合的な人生の目的意識を反映した、とても専門的な情報を探している」という可能性だけだろうか?また、そんな言葉にしない目的と関連した専門的な情報を、何であれ絞り込むことで、他の情報源や情報形態への抵抗を通じて反映されるような、知的な制限を生み出す可能性はないだろうか?そうだとしたら、このことはその人のコミュニケーション方法や、他者から伝えられた情報を聞いたり受け取ったりする方法にどのような影響を与えるのだろうか?

生徒:私の知り合いに1ハウス・蠍座に水星を持つ人がいますが、彼の精神的な性質や彼の水星の性質は、魂のレベルまで浸透していて、常に知識を要約し、どんどん深みに入り、それをかき回して刺激し、変化・進化させているように見えます。

ジェフ: いいだろう。では水星が蠍座の人物は、自分自身の外側にある結果として繰り返される思考プロセスの限界を、自分自身の内部で何らかの限界に達するように経験したりもするのだろうか?

生徒:蠍座のどんどん深まっていく性質上、常により深くへと、(深みの限界になっている)境界線を突き抜けていかねばならないでしょう。それはフラストレーションでもあり、また自由で解放的な状態にも思えるかもしれません。その深みの限界のラインに到達して行き詰まるときにはフラストレーションであり、(限界のラインを突き抜ける際の)帰納的な素晴らしいブレイクスルーという意味では解放です。つまり、木星がより深いレベルに達し、より大きな構図を見ることができるようになるという意味での解放です。

ジェフ:そうだね。蠍座の水星という点では全く同じだが、この水星を1ハウスに配置すると、まるで事実上の牡羊座の水星のようだ。ここで見えてくるのは、多くの既成の意見にとにかく挑んでいくために(牡羊座のアーキタイプ)独立した思考をしたいと望む人物ではないだろうか?基本的に自由な発想を求めるだろうか?これらが関連したアーキタイプなら、他者の主張の知的限界や弱みを見抜いたり、そこに浸透したりする能力(蠍座・水星)を持っていないだろうか?人の弱みに付け込むことで、事実上の意味で自分の思考プロセスの価値を証明しようとしているのではないだろうか?

少なくともそのような人は、人生経験や要求に関わる核心の情報を探している、強烈な思想家であると言えるだろう。そういった非常に全体的な人生の必要とするものは、取り入れる情報を決定したり、あるいは決定のための要因となったりする。だから、表面的で玉石混交な情報を受け付けないのだ。蠍座の水星は、意識においては自ずとこのように働くだろう。では、水星を11ハウス・天秤座に配置した場合、先ほどの蠍座の水星と比べてみると、どのような思考プロセスや知覚、コミュニケーション、情報収集になると予想されるだろうか?

生徒:国際的な調整役です。

ジェフ:天秤座に関するこの非常に深い問題を覚えておこう。天秤座の対極が牡羊座であることを覚えておいてほしい。天秤座のアーキタイプが自分の個性、すなわち天秤座/牡羊座という対極を理解するためには、比較対照を通して自分の個性を評価するべく、多様なタイプ、多様な意見、多様な価値観、多様な信念パターンといった多様な関係に着手しなければならない。

これを11ハウスにある水星の機能として持つとなると、必要となりそうな人間関係や情報の量を潜在的に拡大することにならないだろうか?多様な関係に着手するうちに、11ハウス・天秤座の水星の人はどこかで、自分が何を考えているのか、どんな精神的プロセスなのか、どんな考えや意見なのか、どんな個性かといったことを見失いやしないだろうか。あり得る話ではないか?このようなことが起こるとすると、「天秤座水星の人は、他人の意見を参考にして自分自身を検証、確認、あるいは正当化しようと躍起になる」と予想できないだろうか? 

「あなたはこれについてどう思いますか?」は、天秤座に水星がある典型的な発言だろう。一般的に、天秤座の水星の人は知的指向が強く、人間の力学や人間関係の本質、さらに言えば創造された全てのものの相互関係を理解するための第一のフォーカス(まずそこに焦点を当てる性質)を持っていると言えないだろうか。これは多くの人とコミュニケーションを取り、その関係に着手するニーズのまさに根幹をなすものだ。理にかなっているとは思わないか?

水星が3ハウス・魚座にある場合はどうだろう?3ハウス、つまり双子座のナチュラルハウスに配置してみよう。水星がその本来のアーキタイプにある場合、すなわち、直線的で連続的で演繹的思考の3ハウスにある場合だ。ところが魚座の本質はこのアーキタイプとは正反対であるので、この人物の精神的プロセスには自然と葛藤が発生しないだろうか。論理的にこうならないか?魚座の水星だからこそ、比喩表現や例え話やアナロジー、詩的な言葉を自然に用いて考えないだろうか。

我々の同胞イエス・キリストは、3ハウス・魚座に惑星が六つあった。我々は彼のコミュニケーションをどんなふうに体験している?まだ分からないかな?魚座だよ!

生徒:彼が3ハウス・魚座に六つの惑星を持っていたなんて、どうして分かるのですか?

ジェフ:それはモビー・ディックという神学者がレクティファイ(できるだけ正しい出生時刻を割り出して修正)したチャートから分かる。面白い名前だ。(注釈5)本名はドナルド・ジェイコブス。彼はジェイ・ジェイコブスの父親だ。彼は聖書に基づいてレクティファイしている。つまり、彼は神学者だったので、当然ながら聖書の歴史を勉強していた。もちろん、占星術家によって作成されたイエスのチャートは数多くあるが、もしあなた方が自分で聖書のテーマを勉強し、彼が研究したものを読めば、きっと直感的に全てを理解できるだろう。

例えば、3ハウス・魚座の惑星は、9ハウス・乙女座にある冥王星と逆行している火星にオポジションだ。それはもしや、信念に基づいた十字架刑の象徴なのだろうか?水星は水瓶座にある。つまり、予期せぬメッセージ。蠍座にある月のサウスノードは、海王星とコンジャンクション。神の子だ。アセンダントは射手座。ユダヤの地は言うまでもなく、幼少期のあらゆる旅を示している。

そして、彼にまつわる多くの例え話が、魚や釣りと結び付いているのはなぜか。水の上を歩く「奇跡」や癒しが強調され、また汎神論的・多神教的な時代に信じられたあらゆる神や女神の本質である唯一の神(が語られる)。

私が言いたいのは、彼は明らかに例え話、比喩、類推で語った人物であるということだ。以来、キリスト教徒が混乱し続けてきた理由の一つが、まさにこれだ。それが宗派的・偏狭的な視点の温床になっている。(注釈6)これが魚座の水星の問題点だ。彼の水星は、水星が論理的に整理整頓できる機能以上に遥かに大きな全体、遥かに大きな注目すべき構造を感知し、知覚することができるということだ。その結果、より大きく、より高く、より壮大な何かをほのめかすために、比喩や例え話や暗示で語らなければならないのだ。

これはもちろん、現代社会に生きる多くの人々にとって問題となる。西洋現代社会において、現在このような知的機能を尊重している社会がどれほどあるだろうか。そんな彼らが、1989年のアメリカで公教育にさらされたらどうなるだろうか?そのため、よくあることだが、この魚座の水星というシンボルは、その文化の言語システムに適応すること(柔軟宮アーキタイプ)を学習する(水星)のが常だ。ここに葛藤の元が存在する。分かるかな?

我々はまた、この機能を調整するものとして、水星を様々な惑星のアスペクトに結び付けることができる。例として、天王星にインコンジャンクトする水星がある人の場合はどうなる?どのような思考プロセス、知覚プロセス、知的な組織化プロセス、コミュニケーションプロセスを持つ人物だと予想できるだろうか?

天王星アーキタイプの本質は、成長を制限するあらゆる既存の条件からの解放であり、その結果、反抗する必要性を打ち出すということを覚えておこう。もし形而上学のいかなる形式も受け入れることができたら、このレベルに達した天王星は、普遍的な意識、宇宙そのものの意識や、初めからあったアーキタイプ、またラジオのダイヤルのように微調整するだけで済む青写真(ブループリント)などと関連付けられることを認めよう。信号はそこにある。それにチューニングすればいいだけだ。

生徒:直線的な思考は、時として非直線的になります。

ジェフ:では少々洒落た質問をさせてもらおう。この人物の意識の中で、このラジオのダイヤルの役割でもある内なる水星プロセスは、コミュニケーションのための具体的な言葉(水星)を見付けることに苦労を感じる(インコンジャンクト)、そんな信号(天王星)に同調するようにチューニングされているとは言えないだろうか?

生徒:するとジェフ先生は、この人物は自分が感じている大いなるものについての観念や概念を説明することができないとおっしゃるのですか?

ジェフ:ああ。彼らは、(そういった説明をしようとする時に)ふさわしい言語や単語の並びを特定することに非常に困難を感じることがあるだろう。

生徒:水星は、その性質上、個人を解放に向かわせます。その解放への動きの中にはリズムと蓄積があり、時に天王星へ「トリップ」します。自主性や自分らしさの意味でのびのびと自然にしている天王星ですからね。そして火花のように閃きや解放が生まれます。そして一旦そんな「最強」の状態になれば、あとはもうラジオも「最強」にチューニングが合った状態でしょう。

ジェフ:その通りだ。なぜなら、インコンジャンクトの最も深い経験の一つは、不十分さ、完璧には至っていないことにあるからだ。そのため、もし自分自身よりも高度な何かに同調している精神的なプロセスを抱えており、それを説明するための言葉を見つけようとしているのなら、それは同時に自分の不十分さを認識していることになる。これは、コミュニケーションにおけるフラストレーションを生み出す。個人の精神的なプロセスを麻痺させてしまうかもしれない。

これは、千本の足を持つ百足(ムカデ)に例えられる。歩き続けている間は順調だが、その動き方や仕組み、例えば、46番目の足がどのように動くかを理解しようと意識を向けたら、もうそれまでだ。動けなくなってしまう。したがって、天王星と水星のインコンジャンクトの全体的な課題は、出来事や心に湧くものがどのように流れてきているかを分析するのではなく(インコンジャンクト)、湧き起こるまま流れに合わせてただ話すことだ。そのときには、46番目の足も動いている。

脳のレベルで見ても、天王星は奇しくも脳内の樹状突起と相関しているね。樹状突起は脳の進化を担っている。また水星のようにシナプスや脳のあらゆる配線にも相関している。

もし天王星と水星がリンクしていたら、まるで5ワットの電球に1万ワットの電力が流れているようなものだ。自分自身を吹き飛ばす傾向がある。脳内にとてつもない興奮を引き起こすかもしれない。

そういった特有の兆候に気付いたら、それがあらゆる種類の新しい樹状突起を作り出し、あらゆる種類の新しい理解や認識や気付きのために、現世でその脳を急速に進化させることを計画している魂であると理解することだ。「ハッ」としたり(アハ体験)、新しい気付きを得たり、また今まで考えたこともない思考が自然に発生するときは、脳内で樹状突起が作られている。自分の中で天王星を経験しているのだ。そしてもちろん、水星は自然と湧いてきたものを説明するべく、直線的な単語の並びや論理的な順序を見いだそうとする。そのときにフラストレーションが生じることがある。

これらは明らかにユニークで独創的な考えを持っている人たちの典型だ。しかしながら、こういった考えはあまりにも時代を先取りしている(天王星)ため、耳を傾けようとする多くの他人との間に危機(インコンジャンクト)を生み出すことがある。

水星が解剖学上の聴覚と相関していることを覚えておいてほしい。聴覚神経に負荷をかけ過ぎてしまうこともある。人々は、この人物(の水星)のチューニングから外れてコミュニケーションを無視してしまうか、またはこの人物とのコミュニケーションに反抗したくなる傾向がある。なぜか?

コンセンサスを重視するタイプの人々には感情的な安心感があるが、(水星と天王星に特徴のある)彼らは精神的なコンセンサスという既存の現状に挑戦しているからだ。3ハウス・乙女座で逆行する天王星を持つ人には誰がいると思う?そう、アインシュタインだ。彼が我々のために作った短いスローガンを皆が覚えているだろう。「天才が平凡な心と接触するときは、暴力的な激しい反対に遭うと思っていたほうが良い」(注釈7)既存の現状維持の考え方へ挑戦するのだから、ここでいう接触の本質は抵抗のことだ。

生徒:イマヌエル・ヴェリコフスキーは、木星とコンジャンクションの水星を持っていて、彼は時代に先駆けて本を出し、その結果、科学界から追放されてしまいました。(注釈8

ジェフ:全くその通りだ。実際、1950年代に提唱された彼の理論に基づいて、その特異な例を採用していたら、金星に何らかの気候を発見し、彼の理論が正しいかどうかが分かっただろう。これは金星に宇宙船を送る以前の話だ。その当時主流で力のあった科学界は、金星の大気がどのようなものであるかについて、全く相反する見解を持っていた。当然、彼は約20年間に渡って大学の講演から追放され、手厳しく批判され続けた。しかし金星に探査機を送ったらば、誰が正しかったと思う?だから今、彼は尊敬されている。彼の考えは時代の先を行っていたのだ。

最後に理解すべきことは、水星のトランジットだ。また、現実の現象的性質を整理する精神的機能にも直接関連する3ハウスのカスプのサイン、その支配星のことも掴んでおきたい。

6ハウスのサインとその支配星は、合理的な知性の分析機能と相関する。また9ハウスのサインとその支配星、そして12ハウスのサインとその支配星は、左脳と右脳の意識機能に総合的に貢献することになる。つまり、「アイディアや知覚から、個人がその存在の本質を理解することを可能にする哲学的な信念体系の力学へ」という、総合的な貢献だ。そして、木星、水星、海王星が通過するハウスとサインの具体的な性質を考慮する必要がある。

たくさんのことを理解しなければいけないように聞こえるかもしれないが、この力学全体は、これら全ての特徴を持ち合わせる惑星が、常に出生図を通過(トランジット)していることを理解するための基礎となる。今日のテーマが水星だから特に水星の場合ということになるが、これら特別なトランジットに焦点を当てることで、探していた新情報を、きっといつでもはっきり分かるようになるだろう。またその新情報がどのように協力的なのか、またはどのように葛藤や思想の衝突につながるのか、どのように間接的なのか、どのように直接的なのか、どんな既存の知的な仕組みなのか、どんな既存の意見なのか、どんな既存の信念なのかといったことが、よく分かるようになるだろう。

例えば、トランジットの水星が3ハウスを通過している場合、ここで簡単に分析するとどうなるだろうか?それは、その人の意識が、その時点で自分の人生の本質を理解するための新しい方法を探しているという単純な話ではないだろうか。そしてトランジットの水星が通過するサインが、その情報の質と種類を決定するだろう。

ある人の3ハウスが蟹座で、血の繋がった家族の中で困難があったとしよう。ここで3ハウスを通過するトランジットの水星は、その人が自然と幼少期の環境の経験を反映し、その結果、その人の人生においてその経験を理解するための新しい方法(水星)を求める期間に相関していると言える。それはもしかすると、その人が両親との会話を始めようとする期間、子供と両親の間の心理的な力学に関する新しい本を読む期間、またはこの目的のためにセミナーやワークショップや教室に足を運ぶ期間になるかもしれない。

生徒:私には、より多くの情報を収集し考えを巡らせて、より多くのコミュニケーションを図りたいという衝動に見えますが、そういった理解のフォーカスはトランジットの木星に基づいたものになるのではないでしょうか?

ジェフ:より大きな理解へのつながりはそうだろう。情報収集は水星だ。

生徒:トランジットの水星が3ハウスや他の場所へ移動するような場合、それに付随する理解への欲求は本当にあるのでしょうか?

ジェフ:もちろんだ。それこそが我々が(今日の講義の)スタート地点の本質に戻ることだ。なぜ私はこれを黒板と呼ぶのだろうか?安心感を得るためには、自分の現実を知的に整理し、名前を付ける必要がある。そうしてやがて木星が参加し、同時に抽象的な概念や信念とリンクする。

別の例を挙げよう。トランジットの水星が12ハウス・蠍座を通過するとどうだろう。どんなことを予想する?少なくとも1ヶ月はそこに留まるとしよう。更にそこで逆行したらどうなるだろうか?

生徒:知的混乱ですが、最終的には変容します。それはきっと、対処次第でとてつもない進化を遂げることになるかもしれません。心の内側に向かえば、ふるいにかけて淘汰するような、宇宙空間を旅するようなものですが、最終的にはトランジットの水星が去ったときには、その人物はより良い知識を蓄えて戻ってくるでしょう。

ジェフ:そうだね。しかしそれは、既存の知的構造の変容(分解や解消や溶解)を、その人物が受け入れることを前提としている。もし、その分解や解消を受け入れるのなら、それはインスピレーションや霊感・啓示に満ちた新しい考えに変わっていくだろう。一方で、その人物は自分自身の意識の中に、自分でも出所が不明のあらゆる種類の悪魔的思考を経験するかもしれない。そのとき、自分自身の心の囚人(12ハウス)のように感じるかもしれない。または、対処法次第では、内なる必要性に基づいて、12ハウス特有の勿体ぶった説明(水星)をあの手この手で駆使するような人々を引き寄せる期間になるかもしれない。その説明によって、その人物は自身の知的構造と向き合うことになるかもしれない。

もちろん、典型的な蠍座の言葉で、その人物は「なぜこんなことが起きているのだろう?」と言うだろう。

出生図で水星が逆行している人は何人いる?何人かは恐らく逆行しているが、それに気付いていないだろう。水星は逆行していないとして、水星にアスペクトを形成する惑星が逆行しているのは何人だろう?すると、ほぼ全員が水星逆行となるね!これはオブリーク逆行(間接的逆行)と呼ばれるものだ。(注釈9

さて、出生図で水星が逆行している場合、逆行を矢印――木星を指す矢印だと思ってほしい。言い換えれば、それは左脳の機能を通して「非合理的」にしようと試みているのだ。

進化的に言えば、この水星逆行のシンボルは、知的・哲学的に単純化することを意味する。それは恐らく、その人物が数ある過去世において、知的に選別せず、多くの情報やデータを手当たり次第に収集し、知性が参ってしまい混乱しながら進化してきたことを意味する。

その結果、現世でのその人物は、自身の進化の目的に特化した情報を入手する際、厳しく選別するトレーニングをすることになるに違いない。それゆえ、水星逆行の人々は常にというわけではないが一般的に、学習経験のときに情報が自分の目的に関係がない場合には、情報を取り込むことに非常に苦労する。チューニングが外れてただただ聞き流してしまうのだ。

生徒:なぜですか?

ジェフ: なぜか?なぜなら、水星逆行の人は自分の個人的な目的に合った情報だけを選ぼうとしているからだ。

生徒:情報を取り込む苦労はどこから来るのでしょうか?自分の個人的な目的と結び付いているのでしょうか?

ジェフ: まぁ、さっき答えを言ったばかりだが、ほとんどの場合は・・・

生徒:もう一度聞く必要があります。私は水星逆行です!

ジェフ:通常、水星逆行の人々は、過去世において、あまりにも多くの情報やデータを無差別に選択して収集し、精神・心・知性の仕組みに負荷がかかり過ぎた。混乱だ。あまりにも多くの考え方が自分の中でひしめき合い、(正しさや優先順位を)競い合い、あまりにも多くの知的な疑いが生じた。

その結果、水星逆行の人は現世において、自分の個人的な目的に特化した情報を、厳しく選別して取り入れなければならなくなっている。だからこそ、少なくともこのような社会では、水星逆行の教師が教える、水星逆行の人々のための学校があるべきだと、我々は長年にわたって提唱してきたのだ!理にかなっているよ。その学校はどこにあるのか?あなたたちが始めるのだ。誰かがやらないと。水星逆行スクールと呼ぶことにしよう。

生徒:人々が差別するのを助長するということですか?

ジェフ:違うよ。水星逆行の子供や大人が興味を持ったときに、その子供や大人が興味を持ったことを教えるというような、ごく個人的な教育の配慮を要するだけだ。そうすれば、彼らは教えられたことを丸ごと受け入れることができる。それはまるで写真レベルの記憶力と言っても良いだろう。

しかし、双子座・射手座・乙女座・魚座の力学を忘れてはいけない。実際には、彼らは聞いているものに興味がなければチューニングが外れて聞き流してしまう。魚座・海王星が介入してくる。彼らはボーッとするし、目の前のことよりも面白い空想や想像にふけるのだ。他に質問はあるだろうか?

生徒:はい、ご意見を伺いたいのですが、冥王星が双子座でエグザルテーション(高揚)するという考えについてどう思われますか?(注釈10

ジェフ:私の意見が聞きたいのか?勘弁してくれ。私にとっては、フォール(下降)やエグザルテーションなどというものは存在しない。あるがままだよ。それは昔の占星術だ。

さて、これでこの講義は終わりにしよう。皆が今日ここで何か面白い発見があったことを願っている。来てくれてありがとう。神のご加護がありますように。

注釈1

原文ではリニアと記されているが、数学のグラフで比例を表現するような直線を描いたときの様子。そこから、「こちらが2倍になれば、あちらも2倍になる」「こうなったら、こうなる」のように、論理立てて順々に予測していく考え方を「直線的思考」、そのような構造を「直線的構造」と表した。

注釈2

「6ハウス・魂の成長を可能にする自己改善課題」に、これと近い話題についての補足があるので参照されたい。

注釈3

局在とは、どこにでもあるのではなく「ここにはあるが、あそこにはない」というように、限られた場所に存在すること。

注釈4

ジェフは著書『魂の設計図』(原題は『Structure of the Soul』)や『冥王星:魂の進化成長の旅路』(原題は『Pluto: The Evolutionary Journey of the Soul, Volume 1』)の中で、魂の進化には未進化段階、コンセンサス段階、個性化段階、スピリチュアル段階という段階があることを述べている。「進化占星術の真髄~魂の進化段階~」にも掲載している。

注釈5

モビー・ディックという名前は、ハーマン・メルヴィル作の小説『白鯨』(原題は『Moby-Dick; or, the Whale』)に登場する巨大な白いマッコウクジラでもある。他にも様々な企業が会社名や商品名にモビー・ディックの名を付けているなど、非常に人気のある名前であると言える。

モビー・ディックという人物(1927-1981年)は、アメリカの占星術家、作家、教会牧師、映画製作、出版社経営。1970年に「モビー・ディック」として、ハワイで講演、教育、ラジオやテレビのパーソナリティーをしながら、本格的に占星術家として活動するようになる。『聖書とイエスのホロスコープ』(原題『The Bible and the Horoscope of Jesus』、『Astrology’s Pew in Church』所収)で占星術の学術的研究を行い、イエスのホロスコープと生涯のトランジットを計算した上で、小説化した伝記『ヨシュア・バー・ジョセフ・イシュ・ナザレ』(原題『Joshua Bar Joseph Ish Nazareth』)を書いたことで知られている。ウォーターゲート事件のシナリオを事前に予言したことからFBIの監視下に置かれていた。(Astro-Databankより)

注釈6

そもそもは魚座的にあらゆる神々やあらゆる教義に通じる本質を伝えるものであったキリストの教えだったが、例え話や比喩的な語りによって多様な解釈が可能になり、特定の解釈を重視した様々な宗派が生まれることになった。

注釈7

「偉大な精神は、常に凡庸な人々からの反発にあってきた。陳腐な先入観に盲目的に従うことを拒否し、勇気を持って正直に自分の意見を表明する人のことを、凡人は、理解できない。」(原文: Great spirits have always encountered opposition from mediocre minds. The mediocre mind is incapable of understanding the man who refuses to bow blindly to conventional prejudices and chooses instead to express his opinions courageously and honestly.)が有名。

注釈8

イマヌエル・ヴェリコフスキー(1895年- 1979年)は、ロシア出身のアメリカ人であり、一般には疑似科学者だと見なされている人物。古代史を再解釈して天変地異説を唱える著書『衝突する宇宙』(1950) を発表し、主にアメリカでベストセラーとなった。それ以前にはイスラエルでヘブライ大学創設に関わり、精神科医および精神分析学者として尊敬されていた。(Wikipediaより)原文では、生徒が天王星と水星のコンジャンクションと発言していたが、School of Evolutionary Astrologyに木星と水星のコンジャンクションの発言であると確認済み。

注釈9

オブリーク逆行(間接的逆行)とは、逆行する天体Aが順行の天体Bとアスペクトを組む場合、天体Bも間接的な逆行状態とみなすというもの。

注釈10

フォール(下降)やエグザルテーション(高揚)は、伝統的占星術において、各サインにおける天体のの力の発揮のしやすさに注目した考え方。この考え方はデグニティー(品位)と呼ばれる。

訳:ベッソンちづる(Chizuru Besson)

校正:相原あすか、ワン太郎

監訳:佐々木りさ

原文:The Role of Mercury in Evolutionary Astrology | School of Evolutionary Astrology – Jeffrey Wolf Green

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